FILE
5

角谷由美子さん

Iターン(2012年3月)

前住所:大阪府茨木市

出身地:由美子さん 堺市、満さん 福井県

現住所:南あわじ市

職業:由美子さん さをり織り工房
満さん 会社員

家族:夫婦、子供2人

古民家は生きている感じがするんです

Q1 田舎暮らしを考えたきっかけ

長男が釣好きで、時々淡路島には訪れていました。「そんなに好きなら一泊旅行をしよう!」と調べる中で「なんだか淡路島住みやすそうやね」と話していて、そこから移住することに考えが広がっていきました。
以前から夫婦で「田舎暮らしをしたいね」と何度か話はしていたのですが、最初は定年退職をしてからと思っていたんです。けれど、子供が中学生に上がるタイミングで「いま行かなかったら、一生移住しないかもしれない」と思ったんです。だって、子供が中学、高校、大学と行くことを考えると何年も先の話になります。行くなら今のタイミングだと思いました。

Q2 南あわじ市に移住したきっかけ

そして家探しが始まりました。家が見つからなかったら諦めようと思っていたのですが、不動産屋さんに問い合わせてからしばらくして連絡があり、島内を何ヶ所か見て回りました。1件目の家も広くて素敵だったんですが、2件目に案内されたのがこの家で「わー、むちゃくちゃいいやん」って。
大阪ではずっとマンション暮らしをしていたので、どうせ住むなら広くて古い家に住みたいという思いがありました。家庭菜園もできたらいいなという気持ちもありましたね。新しい家には全く興味がありませんでした。新しい家は、なんていうか呼吸をできているような感じがしなくって。古民家は家が生きている感じがするんです。家が呼吸をしている感じがする。落ち着きますし、歴史が感じられるのも良いですね。

Q3 南あわじ市の魅力・移住してよかったこと

気候も穏やかで、食べ物も美味しい。空も広いですね。
気候が穏やかというのが、移住先を考える上で一番の条件だったんですよ。暑いのも嫌だし、寒いのも嫌だし。笑
実家のある大阪が近いのも嬉しいですね。私が所属しているさをり織りのグループは、本部が大阪にあるので月に1回くらい大阪に行きますし、実家にも時々帰ります。
でも、大阪に戻りたいとは思いませんね。島外に出て、こちらに帰ってくるとふっと落ち着く。コンクリートばかりではなくて土がある環境が良いと思います。それに星がすごく綺麗ですね。
引っ越してきた日のことなんですけれどね、荷物を運びこんだりしていたら終わったのが夜7時半頃だったんですよ。ライトも消して、私たちも引越し屋さんもすごく疲れて上を見たら、もう、落ちてくるくらいの星空で、みんな絶句したんですよ。

Q4 移住して苦労したこと

この家は、おばあさんが一人で住んでいた家で、親戚の方も遠方に住んでいたこともあって、偶然売りに出されていたんです。ただ、空き家はあっても売りにでない家も多いですね。
購入当初は改修が必要な家で、県や市の耐震補強の助成金をもらったりもしながら半年ほどかけて住めるように整えていきました。古民家改修はいろいろ調べて、高知県で古民家改修を専門として行っている岩城建築事務所の方々に依頼したんです。改修を進めながら「ここを剥がせば竹の天井がでてくるはずだ!」なんて講義もしてもらって。
そして彼らに改修をお任せする上での条件が、「オープンハウス」(時間を決めて自由に見に来てもらう内覧会のようなもの)をするということだったのでやってみたんです。凄くたくさんの人が来てくれて、今から思えば地域の人全員が来られていましたね。みなさん「このまちにどんな人が来たんだろう」って関心があったんだと思います。改修期間中で私たちが引っ越してくる前から、みなさん私たちのことをよく御存じでしたし、今もうちの状況はみんな知っていると思います。引っ越してきた当初は早朝にご近所の方がお野菜を持って、玄関をガラガラって開けられて驚いたりしましたね。でも、それも慣れました。どきどきしながら地域の婦人会や、食事会に参加したりする中でみんなの住まい方が分かってきましたし、この地域の人は温和なんだということが分かってきました。地域性がハッキリしていて、地域によって人の気質も異なるので面白いですね。

Q5 現在のお仕事

週3回、予約制で教室を開いています。
さをり織りっていうのは自由なんですね。きっちりかっちり型にはまったことをしなくてもいい。それも個性なんです。6年前に友人に誘われて教室に通い始めて、すっかり夢中になって。織物が自分にもできるなんて夢にも思っていなかったし、遠い世界のものだと思っていたので2時間くらいでストールが織れて「すごい」と感動しました。大阪で2年間学んで、こちらに越してきて教室をはじめました。
また、大阪の「さをりの森」にvegasというグループがあって、そこから東急池袋の西武百貨店に年に数回展示販売をしています。

Q6 平日・休日の過ごし方

教室をしている間は自分の織物は出来ないので、休日は自分の織物や仕立て、染物をしたりしています。藍を育てて生葉染めをしたり、麻炭染めや泥染め(ベンガラ染め)をしたりもしているんです。生葉染はすごく簡単で、フレッシュな葉を摘んで、藍の葉と繊維を一緒に揉みこむだけで出来るんですよ。自分で染めた糸はたくさん量ができるものでもないので、生葉で染めたものは生葉で染めたものだけで織って使います。
それと、これは驚いたことなのですが、淡路島の人は物作りが好きで、プロみたいに手先の器用な人が多いですね。「趣味で作ってるんです」って言われて見せてもらったら本格的な人がほとんど。この辺に来てびっくりしたのは、みんな簡単なことだったら自分でされるので凄いなぁと思いました。それを見て、自分も少しやってみるようになりました。表の看板は主人が作ってくれたものなんですよ。

Q7 田舎暮らしを考える人へのメッセージ

田舎に暮らすうえでは、地域の人に馴染むことが大切だと思います。無理のない範囲で地域の自治会に加入したり、掃除に参加したりするのも良いと思います。私は、分からないことは何でも聞きに行ったりしていますね。
自然環境としては、空も土も緑も山も海もある。淡路島はどこに行っても四方に小高い山が見えるんですよ。そして空が広くて、呼吸がしやすい。それは代えがたい物だと感じています。この環境が、もう他では住めないなと思う魅力です。

さをり織り工房~虹の森~

http://nijinomori.info/